
1月の終わりって、上五島は閑散としてるんですよ。魚が一番おいしい季節なのに。この時期に島外からお客さんがどっと遊びにきてくれたらと、ずっと考えていました。
「トレイルランの大会をやったらどうか」って、ご近所の飲み仲間・松岡さん(後に大会実行委員長に就任)と盛り上がったんです。上五島では、海を見ながら山を走るという、全国的にも稀なコースを設定できますから。しかも、今や日本でトップクラスのランナーとして活躍する川崎雄哉くんは上五島出身、僕の後輩(同じ高校の卒業生)です。彼をゲストランナーに招いて、みんなで走ったら絶対楽しいですよね。
こうして2022年にプレとして始めたのが「川崎雄哉カップ・上五島トレイル」。今年は1月26日(日)に第3回を行います。プレでは申込者が40人だけでしたが、年ごとに増えて今年は220人のランナーが走ります。
人気の秘密はトレランの楽しさはもちろん、前夜祭と後夜祭。上五島の「自然と食と人」でおもてなしをしようと、プレの前夜祭で刺身を振る舞ったんですが、僕は不完全燃焼で。もっと上五島の宝を知ってほしいと、翌年の第1回から寿司職人の格好をして寿司を握る前夜祭を企画したら、大好評! あ、ちなみに寿司を出す前に、「料理の鉄人」のパロディで寸劇も島の仲間と企画してやったんですよ。
この時期にうまい五島の魚は、意外と知られていないマグロ(天然も養殖も!)、ヒラメ、ブリ、メジナ、水イカかな。走る前夜なのに思いっきり食べて上五島の焼酎も飲んで、大人の新年会ですね。翌日けろっと18kmの山岳コースを走る、鉄人ランナーばかりです。
昨年は、ふと思いついて夜中3時から寿司飯を炊いて、山上のエイドステーション(エネルギーと水分の補給場所)に大漁旗とマグロを持っていったんです。こころさんは「走りながら寿司なんて!」と笑いましたが、いざ始まれば行列。急な登山道を走ってきてパクパク食べるんだから、みんなどうかしてますね。
島の人たちもたくさんボランティアとして参加してくれます。今年は、前夜祭の寿司職人として、中高生が登場するんですよ。寿司を握る研修もやりました。「五島の魚や自然はこんな喜んでもらえるんだ」「大人たちバカみたいに楽しそうやん」と感じてもらいたくて。外からの目線で島を見てみるって大事な経験でしょう。若い人はいずれ島を出るにしても、帰ってきたくなる思い出を心のどこかに持っていてほしいんですよね。
僕も九州に走りに行きますけど、この大会では裏方。ほぼ1年中、このイベントのことを考えています。冬になったら魚の入荷状況を漁師さんに聞いて回ったり、コースの草刈りしたり。今年の寿司と寸劇のネタもお楽しみに!(慎)